9月上旬の時点ではまだ一度もヒメオオ採集に行っておらず、知り合いの土産話を聞いては悶々としていました。
今期最初のヒメオオ採集に行けたのは、先週8日。
この日の目的地は、自身まだヒメオオを採っていない某市町村。
ヒメオオ採集は長年やってきたので、低地の市町村を除いてはかなりのラベルを採っている自負はあるのですが、未採集の市町村があと少し残っている状態です。それらの市町村も過去に何度かアプローチしたもののあと一歩? のところで毎度空振りしていて、少なくともどの市町村も「行きさえすれば採れる」ような甘っちょろいものではありません。
ただ、元々の採集難度が高いのかと言うとそうでもありません。未採集市町村は各地、ブナ原生林もそれなりに残っていますし、「ライト焚いてて飛んで来た事あったよ」「昔採れてたけど今は道がちょっと荒廃しちゃって採れなくなったな」と云った話も採集仲間から聞きます。古いですが文献にも記録が残ってるものもありますからね。今回行く某市町村も例に漏れず、記録もあるし採ってる人もいます。タイミングと運、結局のところ「自分にツキが無い」だけなのでしょう。
さて、当地へのヒメオオ採集は最後に行ったのはもう何年前になるか・・・と言うくらい久しぶりです。この市町村は長い林道が何本も延びては周回して別の林道に繋がるような構造になっているところが多く、前回はそういった林道に入った事で目移りしてしまい、植林地帯をウロウロするだけで面白みも無く凡退した記憶しかありません。
それからしばらくここは避けていたのですが、久し振りにこの市町村の地図に目を通していたところ別のルートで面白そうな場所が在ることを発見しました。今回は、そこを目的地としました。
現地への道中が少々長い事を見据え、朝から現地入りできるように目覚まし時計を朝6時00分にセットたのですが・・・
起床。時計の表示は10時30分。
寝過ごしたァァァ―――!!!!!
身支度を整え、車に積んであったライト機材も急いで降ろし、出発したのは11時を過ぎてからでした。

この展開、本当に何十回目なんだろう・・・
太陽もほぼ真上まで昇っていて、日曜日と云う事もあってどこもかしこも車だらけ。道中は山道すら車が詰まっています。
ひぇ~~ん・・・前の車がトロいよぉ~~
信号に引っかかる事も無く、林道入口に到着したのは昼過ぎ13時頃。空は快晴、風もほぼなし。
Google mapの航空地図で見る限り、上空からの角度の所為か道が活きているかどうか判然としていませんでしたが、ちゃんと使われている道だったようで安心しました。オフラインでも地図が確認できるよう、電波の入るうちにスマホに地図を読み込ませておきます。
さて、この日の行程ですが、地図を見た中で特に可能性のありそうな林道1本に絞って探索する事に決めていました。これを【林道A】とします。
その上で、もし時間が余ったり進むのがあまりに困難だった時の事を想定し、林道Aの途中から分岐している別の林道を2次プランとしました。これは【林道B】とします。
【林道A】
未舗装路になり標高も既に400mを越えています。林の奥にはブナも見え隠れし、既に生息圏には突入している模様。
途中、林道Bとの分岐を過ぎ、林道探索もここから本番。
徐行しながら “おいしそうな樹” を物色していきます。
徐々に沢に近付いてきたと思ったら、なんと “直接” 沢を渡る事に・・・
この数日雨が降っていなかったので問題なく渡る事が出来ました。
(地図で見た時はてっきり橋を渡るもんだとばかり思ってた・・・)
今度はヌタ場。一応オフロード対応のタイヤを履いて車高も上げているので難なくクリアしましたが、見た目にはちょっとこわい路面でした。
その他、浅めのクラックに気を付けたり、落ち枝を踏み弾いてしまったりと地味に注意が要るドライブが続きます。さすが山奥と云った感じで、採集の期待は高まります。
しかし、林道脇の樹にはヒメオオは勿論、齧り痕すら見つける事が出来ません。さらに、思っていたより林道の距離が短く、あれよあれよと言う間に峠に達してしまい隣の市町村に到達してしまいました。山の峠付近って、ヒメオオがボツボツと付いている事もあるのですが、ドンピシャな雰囲気のヤナギ並木にもヒメオオの生体反応は一切ありません!
その場で迷いましたが「もう来る事も無いだろうから・・・」と、別市町村に入った後もこのまま林道を進む事にします。意外にも人通りはあるようで、他の車のタイヤ痕もあるし、1台のバイクともすれ違いました。おそらくこのまま林道は反対側に貫通できるものと思われましたが、
・進むにつれて原生林環境が薄れ植林地帯になってきた事
・残された時間を林道B探索に充てる為
折り返して道を戻る事にしました。
帰り道も様々な樹の枝を見ていきます。ヤナギ類、ダケカンバ、ウダイカンバ、ナナカマド、ヤマハンノキ・・・しかし齧り痕はやはり付いていません。
本命だった林道が手応えなしに終わってしまい溜め息が多くなってきますが、気持ちを切り替えて次に向かいます。
【林道B】
林道Aの道を戻り林道B分岐まで戻ってきたのは15時前。陽も落ちてきて探索時間はあまり残されていません。
林道Bに入って2kmちょっと。
ここまでの時点で林の雰囲気もまだヒメオオ採集には向かない様相(いない事は無いんだろうけど)でしたが、
残念ながらここで車止め。観測施設が在る関係で、ここまでの道が整備されていた模様です。
・・・と云う事で、いよいよここからがヒメオオ探索本番。
むしろ今までに採るのが叶わなかった産地ですから、今さら車を降りずに採ろうなんて虫がいいにも程がありますね。トレッキングシューズに履き替え、薮漕ぎ用の上着を羽織り、リュックサックと網を携えて、深く笹薮が茂る林道にそろそろと入りました。
突入直後はマツ林。背丈ほどのササが空間を埋めていて、違う意味で “いそうな雰囲気” が漂っています(←前フリ)
路面から灌木が生えているなど、明らかに車では入れないギリギリの道が続きます。
マツ林を過ぎたら今度はスギ林。航空地図を見ると、小班でブロック状に並んだ植林地帯のド真ん中を進むようになっていて、小班の合間にちょっとだけ原生林区間を挟むような構図です。その「ちょっとだけ原生林区間」も漏らさずチェックしていきますが、個人的に最も期待値が高いのは、最後の植林地帯を過ぎて林道がちょっとだけ残されているエリア。距離にして1km有るか無いかと云うものですが、今日はもうそこに懸けるしかありません。
植林区間中、伐られていない原生林区間でやっとヒメオオの齧り痕をヤナギに見出すことが出来ましたが(写真じゃ見えねぇ)、あと一歩・・・本体が居ません。
着実にヒメオオまで近づいてきているので、じわじわと期待と不安で緊張感が高まっていきます。
時折りヒメオオの齧り痕を発見しては、本体がいない事にがっかりして通り過ぎます。
これも齧り痕しかありません。
別角度からも見回して次へ進もう―― と通り過ぎかけたところで、
?
あれっ・・・・・・て・・・
もう一度樹の下まで戻って見直してみると・・・
Ohh!!! Jesus!!!!!
いたじゃんか!!!!!
カメラにも写ってたのに齧り痕だけ見てたわ 危なッ 笑
数年ぶりの市町村単位で新ラベル追加。
地図で現在地を確認すると、歩き始めておよそ2km地点。ちょうど植林地帯最後のブロックが終わる付近だった事が判りました。
周囲の景観もガラッと変わり、圧迫感のある林内だったのが、日当たりのいい環境になっています。↑↑この写真の雰囲気、解かる人には伝わると思います うふふ・・・
近辺の灌木にも齧り痕がいくつか付いていて、ヒメオオのポイントと言って間違いは無いでしょう。ただ、残念ながら本体はどこにも居ません。さっきの個体も後食中ではなく下を向いていましたから、もしかしたら日中の高温の影響で樹を降りてしまった可能性があります。
残りはおよそ1km弱。選別できるだけの追加が得られるか期待をかけて進みます。
崩落箇所をトラバース。この崩れた箇所も、おそらく昔は良好なヒメオオポイントだっただろうに・・・。見晴らしが良いので遠景を撮ってみます。
沢を2本迂回すると、いよいよマジでヤバい雰囲気のする景色になってきました。
ササ、ヤナギ等が密に折り重なったように生えていて、本気の薮漕ぎ状態。時刻も17時近くになり、暗くて枝先がほとんど見えなくなってきました。
地図上の林道終点まではまだ500m残っていましたが、ここで諦めて引き返す事にしました。
ここから、道中全てのホスト樹に “答え合わせ” を行なっていきましたが(←つまり蹴り落とし)、まァ俺の目は節穴じゃなかったですね♪♪ 喜ぶべきか哀しむべきか・・・
植林地帯を抜け、地図を見ながら車はもう目と鼻の先・・・と云うところで、行く先の笹薮が
ガサササッ ガサササッ ガササササ・・・
と暴れるような大きな音を立てて揺れだしました。
音は瞬く間に遠のいていき、瞬時に静寂が戻りました。
この笹薮の濃さと音の立て方からすると、カモシカじゃないよなァ・・・となると、やっぱり奴さんしかいないな・・・
周囲を注意深く警戒しながら駐車場所に到達。
装備を外して車に乗り込んだ頃には時刻は18時を回っており、
林道の入り口(舗装路)まで戻ってきた時には空は暗くなっていました。
↓↓FC2動画
↓↓YouTube動画
帰宅後、この日採れた唯一の個体の体長を測ると45mm。普通サイズですが、大きくても小さくてもこのラベルが採れたことこそが今日の全て。
(ちなみに、ちょっと記事の中にちょいちょい市町村のヒントを入れています。オイシイ思いが出来る場所じゃないので、やる気がある方がいれば行ってみるといいですよ。直接訊かないでね♪)
今期初のヒメオオ採集、そのかわきりは中々にスリリングなものでした(ヒメオオ自体は夏にライトに飛んで来たヤツもいたけど)。
特に、ここ数年は新規の市町村が更新できていなかったので、鬱憤がちょっと晴れたような爽やかな気分になりました。疲れのみを持ち帰らずに帰りのドライブが出来たのもいつ振りだろうか? と云うくらいです。
この後飼育作業などにも時間を割かなければいけませんが、今シーズンはまだまだヒメオオを楽しみたいところです。
何せ、未採集市町村もまだ残っています。
え~と残りはあと・・・6つか。
・・・いや結構多いな!
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