2024年飼育増種 第1弾!【簡単に飼育したい!】

どうもこんばんは会長です、年の瀬の慌しい中皆さま如何お過ごしでしょうか?
1日ぶりの再会ですねぇ。昨日コクワの記事をUPしたばかりなんで、次は大晦日の夜中あたりの更新かと思ったでしょう?

残念ながら、今年もあとわずかと云うこの時期まで延ばし延ばしにしていた記事ネタのおかげで、ブログを休んでいられなくなりました。

その記事ネタとは・・・増種記事。

実は今年もいくつか増種していたのですが、振り返るとそれらの話に ひ と つ も 触れていませんでした。せめて「増種した事だけでも書いておかなければ」と、他の飼育記事を全部来年に後回しにして今こうして慌てて記事を書いているワケです。

『箇条書きにしてまとめればいいんじゃない?』
・・・それはできません。後々記事をカテゴリ分けした時にどれが何処にいったか判らなくなるので、1種ずつ記事を分けていきます!苦しいぃ・・・
その代わり、長ったらしくダラダラ書かないよう、きちんと段落で区切ってコンパクトにまとめていきます。「いつもそうしろよ」って話ですけど・・・



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トラグルスノコギリ(アシミリス亜種) 西パプア州 アルファック山脈

初飼育種です。

[種の解説]
【学名】Prosopocoilus tragulus assimilis (Parry, 1864)
【体長】♂27.3~68.0mm(飼育最大71.3mm) ♀25.1~32.3mm
【分布】ワイゲオ島(基産地)、ニューギニア島北西部、ヌンフォル島、ビアク島

世界のクワガタムシ大図鑑(藤田、1994)によると、本亜種は最初ワイゲオ島産1♀によってCladognathus assimilisという独立種として記載され、その後トラグルスノコギリと同じ事が判り、再検討の結果本書にてトラグルスの亜種として扱うようにしたのだそうです。
分布について、ニューギニア島のどこまで分布しているかちょっと気になったので簡単に調べてみましたが、基本的には生体などが出回っているのは島北西部・西パプア州のアルファックですが、その近辺(マノクワリやランシキ)やファクファク、さらにはパプア州のナビレも出回った事があるようです(勿論そのラベルを信じればの話ですが)。標本屋のコレクションの中にはもっと東の産地も在るかもしれません。
そして体長について、新旧の大図鑑やBE-KUWA79号・世界のノコギリクワガタ大特集では♂最大体長が一様に「59.0mm」と記述されていますが、BE-KUWA37号の本亜種ギネス登録個体の寸評で「野外品で今年68mmが入荷した」と云う記述があるのでここではそこを踏まえました。ちなみに、「飼育最大」と云うのはBE-KUWAの飼育レコードから引用しています。


[生体の国内流通]
昔から流通のある種(亜種)ですが、近年は野外品はあまり多く輸入されません。同地から流通するクワガタと云えば、パプアキンイロを筆頭にパプアヒラタ、インターメディウスヒラタ、ビソンノコギリ、プラティオドンネブト、イグジミウスホソアカ等がいます。それらと比べると、本種は便がある度に入荷するようなメジャー種ではなく、入荷がゼロである事の方が多いです。入荷したとして、季節物のようにドバっと大量に来る事もなく、入荷種としてはかなり存在感が薄いと言えます(それに比べたら、今どきはモンギロンホソアカの方が安定的に来るもんなァ)。なので野外品については現在、普通の昆虫ショップが取り扱う例は無いに等しく、いずれも輸入業者の直接販売分で全て売り切れている状態に見受けられます。

一方、飼育品の流通もトントンなように個人的には感じます。
本種は累代自体は容易な方で、野外品も難なく産んでくれるようで「ブリード失敗した~!」と云う話はあまり聞きません。ただ、同属で近いグループにファブリースハスタートラフェルトと云った人気種に注目が集まり、需要の低さから供給側もあまり力を注がない → 市場でもたまに見る程度で飼育者が一気に増えないのでは…と思うんですよ。


[増種経緯]
元々、色ノコ好きとしては飼育してみたい虫ではありました。それに、ネットなどで飼育情報を見る限りは「とても飼育に向いたクワガタである」などと書かれているじゃないですか。これは飼育してみたい! 何せ、オキピタリスとかゼブラみたいな妙に “飼育にクセのある” 種類ばかり相手にしていた所為で、「なんかもっと普通に、気楽にブリード出来る色ノコを飼いたいよぅ…」と常日頃思ってましたから
ただ、やたらめったら増種しなくなった現在、「欲しい!」と思う虫の優先度としては本種は20~30番目くらいの位置にある状態で、書籍やSNS上で本種が目に入った際に一時的に10~15番目くらいまで上昇する程度のもの。野外品の入荷もさして絶望的なワケではない事は分かっていたので、飼育品を欲しがる気にもなりません。

そうした考えの上で、5月末のネシア便で本種が2ペア入荷したのを確認したワケです。少なくとも、数ヶ月以上はペアでの入荷が無かったハズ。当然、オークションに出品されたこれらをリストに入れてウォッチしていました。
1円スタートで出品されていたので何人も参加者が来るワケですよ。ところが、最初に終了した大型♂のペアが思いの外安く落札された事に拍子抜けし「これなら俺も入札参加してみてもいいか」と俄然やる気になっちゃったんですな。
自分が入札に参加した2ペア目は小さな♂だった事もあり(?)、1ペア目よりちょっとばかり安く落とす事ができました。どうせみんな、「1円スタート」の部分にしか魅力を感じなかったんでしょ(←と云う印象)

オークションでは、他に抱き合わせで買ったものは無し。
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かくして、6月9日に生体は到着しました。


[入手個体について]
到着した生体を観察してみます。

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肝心の♀個体の状態ですが、オークションの出品画像で見てたよりもずっとスレてます。大腮は、先端が欠けるまではないものの摩耗しています。背面・複眼もかなり擦れていて、野外で相当長い期間過ごしたであろう事は容易に想像がつきます。上翅には穴傷も見えます。

体重は量っていませんが、手に持った感じ「このくらいのサイズのノコ♀」にしてはちょっと重みは感じられません。かと言ってスカスカに軽いと云うほどでもない感触で、「まだちょっとは産めるだろう」と云う印象でした。
観察中には飛んだりもしていたので、弱ってはいないようでひとまずよかったです。

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裏側はこんな感じ。意外と地味です。これがファブリースみたいに「個体差で紋が出る」とか、ブリードする中で変化を見られたりすると面白いんだけどな。


[飼育開始から現在まで]
産卵自体は難しくない種との事ですが、そうとなるとかえって悩みます。産卵用のマットとして、10リットル以下/千〇百円クラスの “必勝銘柄” みたいなのは確かに安心感はあるのですが、何に対しても高価なマットを使うのって「何も考えてない」ような気がして面白くないんですよね。ブリードの甲斐が無いと言うか。お金も有限だし。なので、せめて「産卵難易度の低い種」には、“ノーマルなグレードの産卵マット” として何かちょうどイイのがないものか探した結果、タイミングよく見つけたこれ↓↓を買ってみる事にしました。

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月夜野きのこ園製・産卵Mat《プロトタイプ》
最近になって発売された新商品で、自分がこれを購入した当時はまだ試験販売中でした。「くわMat」が終売してからマットを買う頻度がグッと下がった月夜野さんでしたが、これは面白そうと思い、数量限定販売だったこのマットを運よく買う事が出来ました。

月夜野きのこ園製マットの良い点って、しっかり中身を充填してるところなんですよね。メーカーによっては「これ絶対表記通りに容量入れてないだろーが!」ってセコいマットがありますからね。その点、ここのはズッシリミッチリと10リットル袋にマットを詰めてますからね。
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それはいいのですが、届いたマットは袋の上から見た感じ、ちょっと白カビが回ってて小石が入ってるのが見えます。ちょっと心配です。

袋を開けてみると、嗅ぎ覚えのある独特の香り!
「あ、きのこマットだ~[いい気分(温泉)]
微粒子で、触った感触は非常にやわらかく感じましたが、匂いは完全にきのこMatです。多分、きのこMatをさらに粉砕して加工した製品なんだろうなと想像できました。

ひとまず生体の到着に合わせ、事前に撹拌して1日だけガス抜きしてから、
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Beケースにカットした軟材(全埋め)と一緒に詰めてセットしました。


そこから数日が経過、早速ケース底に卵が見えてきました。
ヨッシ! 流石ッ! マットのおかげか虫の状態かワカランけどもこれは楽勝そうだ!


―――と思ったのもほんの一瞬でした。
見えている卵が次々に溶けていくのです。

産み付けられた卵が次々腐っていく様子を見て、これは不味すぎると云う事で一旦セットを解除することにしました。
セット解除(=割り出し)はセット後1週間以上経った後で行ないましたが、健常そうな白い卵は1個も見つかりませんでした。どうやらセットした最初の頃に産んで以降、産卵行動は止まっていた模様です。

これらの様子から、
・マットのガス抜きが足りていない
・親♀が種切れを起こしている
と云った可能性を考え、♀を一旦♂と同居ペアリングさせることにして、その間に同じマットをもう一度撹拌してさらにガス抜きしてみました。

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仕切り直して6月27日に再セットです。

それから数日、反応なし。

1週間経っても、反応なし。

2週間経っても、全く変わらない。

ケースの底には何も見えません。
やっぱりマットが合わないのか? 前回の産卵分で産み尽くしてしまったのか? 色々と悪い想像ばかりしてしまいます。おまえ、飼育は簡単じゃなかったのかよ!!

KIMG7926kai.JPGセットの再考も考えるようになっていた7月19日、やっとケース底に卵が見えました。いや…毎日見ていたワケじゃないですけど、いきなりドバっと産んだな。

以降、数日おきに観察していましたが腐る事もなく順調に膨らんでいき、明らかに前回と様子が違うのを確認できこれで安心です。それと、ここまでマットについてネガティブな事しか書いてなかったので、そっちの意味でも安心しました。
それにしても、ケース底に卵が見えるまで時間が掛かったのは何ででしょう? それまで内部で産んでたのか、マットの問題か何かで産卵スイッチが入らなかったのか。

それから約2ヶ月。見えていた卵も皆孵ったのが確認できたので、9月16日に割り出しを行ないました。
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ケース底に幼虫が見えています。一時期は、ここまで来るのも無理かもしれないと思ってましたね。もしこれで失敗したら、「もう一度飼育するのか?」「飼育品でもいいと思うのか?」と考え直したことでしょう。

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幼虫はマットから主に出ましたが、産卵木にも少数入っていました。見た感じ、この材を意識して産んだようには見えなかったですね。多分、体力のある新しい♀だったら産卵木もちゃんと齧って産み付けるのかもしれません。

♀親は既にマット上で事切れていました。いやぁ…欲を言えば標本に残したかった…

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結果は19頭

幼虫の成長具合もほとんどバラつきは無く、♀の状態から見てもほぼほぼ産み切ったんじゃないかと思えます。
幼虫達は、カップなどとケチる事無くしっかりビンへ投入。生オガ発酵マット、WF1でも大丈夫だよね?…多分…





―――と云った具合で、まずは増種1つ目の紹介は終了です。ササッと書き終わるつもりが、結局ダラダラと長ったらしく書いてしまった…

「簡単に飼育できるヤツがいい!」と思ってたクセにしっかり振り回されてしまいましたが、何はともあれWF1飼育は開始しました。今現在ゆったりと成長している様子で、のんびり飼育を楽しめそうです。幼虫飼育は簡単でよく大きくなるようなので、次回はWF1成虫で良い結果を報告できることでしょう。


……大丈夫…だよな………?

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