2024年飼育増種 第2弾!【かの島、再び…】

年末駆け込み増種記事、2つ目は……

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かつてこのブログで熱心に記事を書いていた “あの虫” を、再び紹介できるとは自分でも全く思っていませんでした。



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ゼブラノコギリ(亜種ルソンエンシス) カタンドゥアネス島 シワン山


[種の解説]
【学名】Prosopocoilus zebra luzonensis Mizunuma, 1994
【体長】♂42.8~64.5mm(飼育最大64.5mm) ♀??mm
【分布】ルソン島、カタンドゥアネス島

世界のクワガタムシ大図鑑(藤田、1994)内で、ルソン島マウンテン州をタイプ産地として記載された亜種です。
分布について、日本の書籍では一様にルソン島のみしか記載がありません。ネット上で調べても日本語検索だと自分のブログしか出てこない(笑)程度なので、このカタンドゥアネス島産と云うのは生き虫業界が先行している状態なんでしょうかね? ちなみに、海外(香港)のウェブサイトではカタンドゥアネス島を分布地として記載しているところもあります。ソースはどこなんでしょう?
ゼブラノコギリ最大亜種で、体長は♂で最大60mmを超え、原名亜種と比較すると縞模様が消失気味になる個体もいます。♂最大の64.5mmは、BE-KUWA62号のフィリピン特集の対談内容から引用。♀については、記載当初から一向に検されていないのかノーデータですが、まぁ24~30mmくらいって事でイイんでない?


[生体の国内流通]
最大60mmを超えるProsopocoilus属の中型種で奇抜な模様の虫ですから、一定の人気があり飼育品もまあまあ流通しています。
フィリピンのクワガタの流通は、ヒラタを頂点として以下のいくつかの種だけが安定的に入荷しているに過ぎず、ゼブラは野外品の入荷・流通数が大変少ない状況にあります。また、本亜種に関しては発生期がある程度決まっているようで、国内に輸入されるのは6月近辺に偏っているように見受けられます。ルソン島から入荷してくるクワガタって産地が毎回バラバラで、野外からの再供給が無い所為で累代が嵩みまくっている飼育個体もよく見られます。以前はルソン島北部の産地からごくごくたま~に入荷がありましたが、近年はビコール地方(カマリネス・スルー州)からの入荷がわりと定期的にあり、トータルで毎年3~5ペアくらいは輸入されているような状況と見ています。
ただ、カタンドゥアネスから来たのを知ったのは今回が2度目だったので、こちらの流通は本当に稀なんじゃないかと思います。


[増種経緯]
10年以上前に一度本産地を飼育したのは過去記事の通りなんですが、個人的にはちょっと不完全燃焼で累代終了した感覚が残ったままでした。何しろ、ゼブラ最大亜種ながら最大サイズが46mmで終わってしまったんですから。飼育者としての腕前の無さが絶望的で哀しくなりましたよ。
それと、飼育の腕とは別に「産地としての違い」があったのか疑問に思った点もあります。そもそもこれはルソンエンシスと同じなのか? と云う事です。ルソンの本亜種はネットでいくらでも大型個体を検索して見る事が出来ますが、カタンドゥアネスってそれと同じ様なサイズ・形状になるの? と思ってたんですよ。上半身の毛量、脚の模様などはどちらかといえば確かにルソンに近いとは思うんですが、大型個体になったらレダssp. ledae(フィリピン南部亜種)に似通う可能性もあります。また、両亜種とも違う可能性もあるワケです。

そうした疑問が残ったままだったので、某SNSで本産地の入荷情報が目に入った時には間髪入れず問い合わせしていましたね(ルソン島産WILDを何度も我慢して見送ってきてたのに!)7月6日に無事受け取りました。
自分の見た限りだと、この時本産地のゼブラはこの1ペアしか見ませんでした。他に入手した人っているのかな…?

ちなみに、今年は非常に珍しいレダ亜種の入荷も別の所でありました。個人的にはカタンドゥアネス産といい勝負で「欲しい虫」ではありましたが、こちらが入荷情報に気付いたのが数時間遅く、既に売り切れていました…


[入手個体について]
♂も♀も状態は非常に良いです。
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いずれも大腮、体表にスレは見られません。虫の中には「発生初期の段階でないと採り難い種類」がいたりしますが、これもそういう部類な気がします。


[飼育開始から現在まで]
セット作業は7月7日。材産みなのは分かっているので、良質の砂埋め霊芝材を在庫から選別して産卵材としました。

材を埋め込むマットは、前回のトラグルスに引き続き月夜野きのこ園製産卵Mat。
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今回はきちんと入念なガス抜きをして水分調整です。こうして見ると質感メチャクチャ良さそうだな、最初あんなにカビと小石で汚かったのに…

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材の加水は、沈めずに下から毛細管現象で吸わせます。材全体に水分が行き渡ったら、樹皮を剥いで横置きにします。

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半埋めにしてゼリーを配置後、♀のみ投入して温室へ押し込みました。

ちなみに親♀個体は追い掛けしませんでした。と云うのは、
・元々、ペアで樹に付いていたのを採っているだろうから(根拠不明)
・ゼブラは♀殺しがあるので、必要に迫られないならやりたくない
と云う点からです。

この判断が正しかったのかは判りませんが、その3ヶ月後こうなりました……↓↓


割り出し作業は10月14日
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地上部の様子はこんな感じ。見えている白いブツは、湿気取り用のドライペットです。

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ひっくり返して材をぶっこ抜いたら、キャー齧りまくってるーー!!!









結果は……ゼロ

上記2枚を見ての通り、地上の露出部には全く産まず、地中の埋没部を齧っていたのですが、この齧り痕を丁寧に退かしてみると、内部の材に産座がいくつか確認出来ました。
しかし、そこは黒く変色してしまっていて、材の中に幼虫の食痕が延びているものは一つもありませんでした。

思い出されるのは、以前レダでやらかした失敗の事。
あの時は、埋めた材に付けられた全ての産座が黒く変色していて、材自体がだいぶ水っぽくグズグズになっていました。
この材も、水分調整をミスってしまった感があります。正直言って今となってはこの割り出し当時の記憶は曖昧なのですが、事実としてケース内にドライペットなんて入れている事からも内部が多湿傾向だったのは明白です。
それに、画像ではなかなか派手に齧り散らしているように見えても、実際の産卵箇所を見る限りそういくつも産んでいないようでした。

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幸いにも♀はまだピンピンしています。
♂も存命だったので、今回こそはきちんとペアリングする事にしました。

…あれぇ…? なんか最近同じ事があったな……??

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数日間同居させましたが、♀殺しも無くペアリングは完了しました。

1週間後の10月26日、セットの組み直しをしました。
KIMG8557.JPG再セットでは、使い切ってしまった産卵マットに代わり、
フォーテック製のMAX MAT スーパー微粒子 改め 産卵1番
を埋め込みに使います。

ちなみに、このマット結構有名なんですが、商品名を改める前も含めて一度も使った事がありませんでした。今回初めて買いましたよ。袋を開けてみた感じ、質感がかなり均一で “清潔感” さえ感じられます。

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今回は、選択肢として2つに分けた材をそれぞれ「全埋め」「半埋め」にしてみてリスクを分散させます。
♀単品で投入後、しばらく徘徊していたのですがその内マットの中へ消えていきました。カタンドゥアネスの今後が懸かってるんだ…頼む…!!!!!





そして、12月末現在
♀の生存反応は消え、♂も虹の橋を渡ってしまいました。

産卵ケース内は、ずっと沈黙状態を保っています。セットから2ヶ月が経ち、根食い系の幼虫ならケースの底面に姿を見せてもおかしくない頃です。控えめに掘り返されたマットと、微かに見える産卵木の齧り痕は果たして産んでいるのかいないのか…なんとも見極め難い様相です。
おそらく近々のうちに、ケースを暴く事になるとは思います。その時、果たしてこの記事を書いた事を後悔することになるのか、どうなるのでしょうか……

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