| 【前回】 |
| 9月23日 3日目 |
| 奥尻の朝 |
目覚ましに反応出来ず日の出を拝めなかったのは惜しいですが、「起きたら昼だった」という事態だけは避けられたので良しとしましょう。
(車の座席でも熟睡できるタイプの人間ですんで…)
朝の身支度を整えたあとは、一度は訪れておこうと思っていた青苗地区の慰霊碑に寄ってみます。
隣には、津波の被害などについて知ることが出来る資料を展示している奥尻島津波館も在りますが、スケジュールの都合で今回は諦めました。
そして、その100メートル先が島の南端部で、
そこには有形文化財の徳洋記念碑が在ります。ポツンと建っていますが、1931年に建てられて以来100年近く地震や津波にも耐えているってんですから、地味に凄いですね。
束の間の観光はこれくらいで済ませ、ここから先は採集のことだけに専念します。

天気は良好、風も問題ありません。色々ありましたが、遠征先で結果的に天気がハマるのはなかなかの強運かも知れません。
Tシャツを脱ぎ、元のツキノワグマの姿に戻って目的のポイントへ向かいました。
| 最後の大一番 |
また、それなりに期待して入った昨日の林道で全く生息の痕跡を見つけられなかった事から、それなりにブナ混交の植生で標高がそこそこあってもヒメオオはいない(もしくは見つけられない)ことも実感しました。
このことから、数ヶ所に絞っていた候補のうちで最も期待している場所に行って今回の採集を締めることにしました。来年また来るか分からないのでせめて一番気になっている場所に…とは思ったのですが、その場所は見に行けば丸一日かかるのはまず間違いありません。今日のスケジュールだと、生息が望めるエリアまで辿り着く前にタイムアップしてしまうかも…やろうとしていることは結局のところ計算の甘い博打に他なりません。
今日の採集はこれから始まるのに、「なかなか楽しかったなァ、北海道 “旅行” ……」と悟り始めているのが本音です。
時刻は8時30分を過ぎたところ。出発地点に到着しました。
ヒメオオの生息を期待するエリアはずっと先ですが、レンタカーのアルトバンで突っ込むには非常に危ないのでここから徒歩で向かいます。
狭い道の脇にある退避スペースに、車を寄せて停めます。
車を降りて身支度を整えますが、早速夥しい数のカが群がってきます。薄いコンプレッションシャツなんか着てるもんですから、体中のどこからでも刺してきます。窓ガラスに映る自分の顔に2,3頭くっ付いてるのが見えます。身体をブルブル震わせながら、防水雨具の上下を急いで着込みます。
車で寝泊まりなんかした所為もあって、車のドアを開ける度にハエなんかも一緒になって中へ飛び込んできます。
首にはタオル、両手は手袋、足には長靴。背中に山歩き採集一式を詰めたリュックを背負い、そして手には7.3メートルの網。
スマホには、現在の位置と標高をチェック出来るようグーグル航空地図とジオグラフィカを両方起動します。山の奥へ行けば通信が切れることが予見されるので、地図は事前に読み込んでおきます。スマホのバッテリー消耗対策に、予備のバッテリーもリュックに仕込んでおきます。
その一方、準備不足でかなり不安なのが採集中の補給用水分。手持ちの水分はこの残り1個のゼリー飲料だけ。青森から来る時にポカリスエットも積んできていましたが、ちょっと大きかったし食料品は現地調達すればいいと思って島に持ってこなかったんですよね。にもかかわらず、先を急ぐあまり道中の自動販売機を全部通り過ぎていました。朝飯も摂っていなかったので、つまるところこの1個がこの日の活動における貴重な燃料と云うワケです(貴重過ぎるので、わざわざ写真まで撮ってしまった)。
もう後戻りは出来ないので、このまま車に鍵をかけて出発です。
| ▼ タイムスケジュールについて ▼ この時点で8時45分過ぎ頃。 帰りのフェリーの乗船手続きが14時00分~14時40分で、フェリーターミナルまではレンタカー屋から徒歩でも2分程度。 レンタカーの返却目安時刻が14時30分頃となっていて、レンタカー屋まではこの駐車場所から20分程度。 採集を終えて車に戻ってきてから帰り支度を済ませるのに10分程度と考えれば、このあと14時00分までに車へ戻ればいいのです。 そうなると、採集に費やせるのは、8時45分~14時00分の間となります。この中で行程を分けてみると ・往路 3時間(ルッキング含む) ・復路 2時間 ・アディショナルタイムとして 15分 となり、正午には戻り始めなければいけません。 |
乾いている所もありますが、やはり一昨日の天気の影響が残っているのか道はヌタって泥っぽいです。
歩きはじめの頃はロケーション的に生息環境には程遠く、「まだ標高が低い」と云う感じがします。一応、道脇のヤナギ類をメインとして灌木のチェックもしながら歩いていますが、枝は総じてきれいです。
歩いている最中はほとんど思考停止状態で、自覚できるほどに感情は「無」です。
しばらく歩いているうちに、向こうから大きなエンジン音が近づいてくるのが聞こえてきました。
明らかに普通の乗用車の音じゃないなと思いましたが、やがて現れたのは大型の運搬車両。祝日だったので気にしていなかったのですが、なんと山でお仕事中の人がいたのです。
見た瞬間マズいなぁと思ったのは、その車の大きさ。道幅一杯ギリギリで通ってきたその車両を見て、自分が退避スペースに寄せた車とすれ違えるか不安を覚えたのです。
車両とすれ違う際、一人で乗っていたその運転手の方と「すれ違えるのか?」と云う話になりました。色々話を重ねた結果、「停めてきた場所まで戻る」ことにやっぱりなってしまいました。
戻るにもそこそこ距離があって時間が掛かると云うことで、何とご厚意で同乗させてもらうことに。
戻るまでの道中、ここに来た目的や軽い身の上話などを話したり、相手の方からも昆虫や鳥類の調査に来た人とたまに出くわすという経験談も教えてもらったりしました。また、この日はこの方一人でお仕事されていること(つまりこのあと奥の方からまた車両が迫ってくることは無い)、自分が読み込んで想定していた地図はもう古くてだいぶ手前で行き止まりになっていることなども教えてもらったのですが、何気にかなり有用な情報です。
アルトバンの駐車場所へ到着したあとは、あちらの仕事の邪魔にならない場所に停める為、さらに道を戻ることとなりました。
こうしてスタートし直すのもキツいですし、加えてさっきよりも後退した地点からと云うのはさらにツラいものがあります。ただ、こればっかりは我儘言えませんから仕方ないですよね。
時間がごっそり減ってしまったので、ここから捨て身の戦法を選択して挽回します。
……そうです、走るのです!
山で走ると云うのは、一般的に考えれば愚の骨頂です。
・汗をかいて体力も急激に消耗する
・この先どれくらいの距離があるのかも判らない
・かといって水分は僅かなゼリー飲料のみ
・急ぐので樹を見る注意力が下がる
・長靴なので足を痛める危険が増す
しかし、もはや残された時間がわずかな今、なりふり構っていられません。
一応、泥はねだけには注意して、ぜぇはぁ荒く息をしながら山道を走ります。
息が切れて度々歩いたりもしながら、少しずつ山の奥深くへと進んでいきます。さっきUターンした地点も通り過ぎ、微妙に周りの景色も変わっていきます。
ゼリー飲料にも手をつけざるを得ません。
やがて路面の様子も変わってきて、車両が通った痕跡も薄くなってきました。
ここからが本番―― そう思って樹に注意を向けるようになるとじわじわ速度が落ちていきます。まだ植林区間も目立ちますが、視界の端々に見えるブナには次第に風格が感じられるようになってきました。
そこにきて突然の終点。
ここだけ平坦で広い空間になっています。これは「行き止まりによる車両の転回場所」以外の何物でもありません。
一瞬、呆然自失しました。終わった…、と。さっきのお仕事中の方から「地図に書いてあるほど奥深くへは進めない」とは聞いていましたが、思っていたよりもずっと手前でした。だって、時刻はまだ11時ちょうどですよ。車を停めた場所からたったの★.★キロメートルしか進んでいないんですよ!
地図上ではこの向こうに道が続いているようなのですが、2メートル丈のササが強固に立ち塞がっています。写真では遠近感が判りませんが、このササはかなり先まで続いています。これを漕いでいくのは、今の状況でだと時間の無駄にしかなりません。
このササの茂みに守られるようにして数本のヤナギ・ダケカンバがあるので、それを見るくらいしか出来ることはありません。
実質的にここが最後のチャンス、剣が峰という状況です。
しかし、ヤナギを見るのがここまで怖いと思ったのは初めてです。何せ、これらを見たら、それで「終了」なんですから。
1本目、まずは一番近いヤナギを見てみます。
5メートル前後の高さの樹の上の枝を見てみると……
ん? あれは、齧った痕じゃない?
遠目がちで写りも悪いですが、確かにヒメオオの齧り痕が見えます。樹皮の毛羽立ちが見えないので古そうに見えますが、これで少なくともここがヒメオオの生息エリアに入っていることが判りました。無感情と絶望から一変して、ほんのわずかに明るい夢が見えてきました。
そうして小さく気持ちが揺り動いた一瞬の間を置いて、視線を低い枝にずらしたところ
………!!!!!??
????????
!!!!!!!!!!!!!!
クワガタがいる!!!!!
目が釘付けになりながらも、一瞬思考が混乱して「クワガタ」の認識が頭から飛び、そしてまた思考回路が繋がってにわかに気持ちが高ぶってきました。
一拍置いた次の瞬間には、「いや、でもあれがもしアカアシやノコギリだったら…」などと不安が過ぎります。それが怖くてすぐに近寄れません。
恐る恐るにじり寄っていって、遂にその正体をはっきりと見たのです。
正真正銘! ヒメオオクワガタです。
地上2メートル付近に♂と♀がペアで付いています。嬉しさと興奮のあまり思い切り叫びたくなりましたが、グッと我慢したまま一旦距離をとって、虫に気取られないように噛み殺すような声で「ヨシッ……!!!!!」と呟いて固く拳を握りましたよ。
カメラを差し伸べて何枚かシャッターを切りますが、手ブレも治まらずまるでピントが合いません。腕もプルプルしだして、気配を察して♂はメイトガード姿勢から次第に上反姿勢に変わってきました。
下草も深くないので落ちても探せそうですが、しくじらないとも限らないので撮影は妥協して回収に移ります。
難なく網へ取り込めましたが、この段階でもまだ緊張しましたね。
さっき書いた通りほとんど諦めていた状態だったので、この状況と展開がまだ不可思議で現実感がありません。ですが、網の中でヒョコヒョコ歩き回る姿をまじまじと見ていたら、後からじわじわと嬉しさが込み上げてきます。
奥尻島で……採ったよ……ヒメオオクワガタを……
標高もまだ◆◆◆メートル程度なのに……
さて、まだまだこの場で感動に浸りたいところですが、まだ終わってはいません。別個体がいるかも知れませんからね。
他の枝には付いていません。答え合わせ(=蹴り落とし)をするも反応はありません。
他の樹も目を凝らして枝をよくよく見ていきますが、ヒメオオの姿も齧り痕も無いように見えます。
やれることはやりたいので、ササ藪を漕いで一本一本の樹の下まで見に行くことにします。
正午までまだ少し時間が残っているので無理して突入していますが、この先ずっと突き進むとなったらフェリーには乗れなくなるでしょうね。
ササの茎は人の指ほどの太さがあり、押し退けるのもマジでキツイです。
グルッと見回してヨシッ! いない!
最後に ドンッ と答え合わせをして無反応、ヨシッ! いない!
高く太い樹は根元近くを蹴ってもビクともしないので、
登ってから上で揺さぶってみます。ヨシッ! いない!
こうして、一生懸命藪を漕いで目に見える範囲のヤナギ・ダケカンバおよそ10本をチェックしましたが、なんと追加ゼロ。最初の樹で採れたのは、本当に奇跡的だったんですね。
時刻は正午となり、これ以上は何も出来ないので潔く撤退を決めました。
当初の予定と比べて移動距離が短かったので、復路は歩いて戻る余裕があります。
一応目ぼしい樹を見ていったりもしますが、やはりヒメオオはいません。
途中、山仕事の方が作業でまた戻ってきていたので、挨拶がてらに採集報告も。目的を達成しましたとヒメオオクワガタを見せ、会話を少し交わして「いや~良かったな!」と称えてもらい、その場を後にしました。
さて、再び歩き始めてまた少し経ったところで、道のカーブの向こうからチリーーン チリーンと音が聞こえました。
一瞬、「ん? 聴き間違いか?」と思ったのその直後、カーブに差しかかったタイミングで人と鉢合わせにな…
えっ!? 叩き網持ってる!?!?
相手もこちらを見て固まり、二人で見合って
「虫ですか?」(あっ、
話をしてみると札幌から来たとのことで、今年5月に初めて奥尻に来て以来何度もここを調べに来ているとのことでした。
この方曰く、この島の感触として虫が全体的に少ないらしいです。また、クワガタはまだ一度も見つけられていないとのことで、こちらがヒメオオを採ったことを話したら驚かれました。
少しばかりお話しした後、両者先を急いでいることもあって「お気をつけて」と挨拶をして別れました。…いやぁ~、こんなところで同業に会うとは、マジでビックリしましたわ。
車に戻ってきて時刻を見ると、13時を少し回ったところでした。結局、材採集とかは出来ませんでしたね。
とりあえず車内に荷物だけ積み込み、カの猛攻から逃げる為にそそくさと山を下ります。
いつもは山を下りる時、後ろ髪を引かれるような寂しさが滲んでくるものですが、この時の気分はもう最高でした。
| 洋上の最終決戦…? |
全身ドロドロの汗だくになってしまったので、全部着替えてしまいます。
全部脱いでなるだけ汗を拭き、下着から全とっ替えです。下着と靴下は1回分だけ替えを持ってきていたのですが、
次に、汚れた長靴の掃除を。
他の荷物と一緒にボストンバッグに詰め込まないといけないので、土や泥に塗れたままではマズイですしね。アルコールタオルやポケットティッシュで精一杯きれいにして、目詰まりしている靴裏の土は日光に当てて出来る限り乾かしておきます。
さてこの最中↑↑、車のドアを開放してカやハエなどのお邪魔虫を次々駆逐していきます。
開けた海岸部にお前たちの安住の地は無い!
この俺に近付いた自らの愚行を呪って果てるがよい!
エアコンも併用して車内の空気をとにかく掻き回します。次々と外界に放たれるカの軍勢。
そんな中、1頭だけ出ていかないヤツがいます。ハエです。
ニクバエ系だと思うんですが、空間を把握して華麗に車内を逃げ回っています。手で捕まえるのも無理だし、狭い車内で網を振り回すことも出来ません。ドアを開け放った場所も認識していて、こちらが追い立てても車外に出る寸前で直角に曲がり車内に戻っていきます。ウヌヌ……!
結局、「車を返したらハエもどっかに飛んでくでしょ!」と諦めました。
最後、少し乾いた長靴裏の土を落として車へ積み、レンタカー返却へ戻ります。
時刻を確認すると、もう結構な時間が経っていて14時を過ぎていました。あ…これは当初のタイムスケジュールで行動していたらフェリーに間に合わなくなってたヤツだ…(車に戻って10分で返却準備とか、無理が過ぎたよね)
奥尻地区の街に到着後、ガソリンスタンドで満タン給油。採集後の水分補給もまだだったので、最後にセイコーマートへ寄って一人乾杯用の飲み物を購入しました。
この時点で既に14時31分! レンタカー返却時刻! 車内に散らばっていた荷物を急いでまとめ、レンタカー屋に到着です。
この際、慌てて荷物を片付けていた所為か、まとめた荷物をセイコーマートの駐車場に置き去りにしていたのに気付いて走って取りに戻るという大ドジをかましたりもしました。何やってんだ自分。
最後はレンタカーサービスの一環で、店主さんがフェリーターミナルまで車で送ってくれることになりました。ありがたいです。
店主 「ん? なんかハエがいる。」
自分 「(まだ居たか… 申し訳ないです スミマセン……)」
1分弱でフェリーターミナルに到着。見送る店主さんにお礼を言って、そのまま窓口に駆け込みチケットを購入!
フェリー前にはうにまるくん。通り過ぎざま会釈かどうかも判らないようなうっすい挨拶をして、船内へ飛び込みました。乗船ギリギリ間に合った~!
帰路のフェリーは勿論カランセ奥尻。
と云うことで、取った席も勿論…

1等客室♪♪ 席の位置も同じです 笑
島から戻るだけなのでこんなに値が張る客室を選ぶ必要は無いんですが、そこは他の乗客への配慮の為ですよ。さっきまで汗だくでドロドロだったヤツが近くに居たらイヤだろうなと思って、2等客室を避けたワケです。
しかし今回は船内の雰囲気がちょっと違います。人が少ない…?
他の客室をざっと見て回りましたが、人が少ないどころか全然いないじゃないすか! 話しかけたら全員顔と名前覚えてられるレベルですよ。
自分の居る1等アイランドビューに至ってはなんと自分1人ですからね。
うにまるくん、かなり退屈だったろうな……
フェリー関係は行きも帰りもずっとバタバタしていましたが、奥尻島での短い滞在はこうして終わりを迎えました。
15時00分、出航です。
島を離れるのが名残惜しいです。紀伊大島の時もそうでしたが、無事に採集を達成しても「島に未練無し。心置きなく…」とはならないのが不思議です。離れるのが寂しいんですね。
徐々に遠ざかる島に目を凝らしながら、意味も無く写真を撮り続けました。
島から離れしばらく経ったので、船内でゆったり休みます。
帰る直前でセイコーマートで買ってきていたソフトカツゲン。えっ? いやだからこれ青森でも売ってるんですって!
カツゲンをがぶ飲みしてもまだ足りず、自販機で炭酸を追加購入してやっと空腹感が消えました。
さて、1等客室で自分一人だと椅子に座っているのが勿体ない気分になってきます。
他の人もいないので部屋の中を歩き回ってあちこち景色を眺めたり、部屋を出たり入ったりして暇を潰します。
せっかくなので、国土地理院の地図に船のスタンプを記念に捺しちゃいました。
(なんだかんだ言って結局自分も他の人と同じことしてるじゃん)
席に戻ってスマホを手に取り、道中を心配していた家人に奥尻を発ったことを連絡。旅先の風景写真を何枚か見せるのですが…
ん? よくあるウィルスのイラストみたいな奴がいるだと? おいおい、うにまるくんに何てこと言うんだ💢
次に、ブログ記事が遅くなるのを察知して「採集結果は直接教えてください」とNo.7から言われていたことを思い出して報告。
自分 「この奥尻島にはドラマがありました。」
No.7 「最後の最後で1ペア採ったパターンですね。わかりました。」
うぉぉぉぉぉぃ!!! 報告する側の楽しみを奪うなよ!!!
No.7 「会長がこんな事を言い始めたらどういうオチか分かり切ってるんですよ。とにかく、おめでとうございます!」
写真撮影、船内探検、報告、荷物点検、色々やっていたら時間は早くも過ぎ去り、せっかくの1等室を持て余しているような状態になっていました。その後もNo.7とのやり取りはダラダラと続き、ようやくシートに背中を預け落ち着いて休めるようになったのは16時を過ぎてしばらく経ってからでした。
旅や採集の疲れでウトウトくるものかと思っていましたが、全くその感じはありません。
時刻は16時30分を過ぎ、本土にも近くなってきました。
広げていた荷物もそろそろ片付ける頃合いとなりましたが、その前に、
やはりオマエとは決着をつけねばなるまい。
しつこいハエめ!
そう、山から戻った時からずっとレンタカーに居座り続けていた「あの1頭のハエ」が、知らぬ間に自分に寄り付いたままフェリーに密航していたのです。
乗船直後から気付いていたのですが、広い1等客室内で自分の周りを離れては近づき、また離れては近づきを繰り返して煽られ続けています。
自分が船を下りればヤツも付いてくる可能性も有るっちゃ有るのですが、客室に居残る可能性も捨てきれません。
全てはこのハエを引き入れてしまった自分の責任。『奥尻島・延長戦』、下船する前に最後の決戦に挑むことにしたのです。
ヒメオオ採集で使った50cm枠のタマムシネットをゆっくりと広げ、枠単体で手に持って狙いを定めます。
網を構えたまま座席に待機してジッとヤツを待ちます。室内にはしっかり防犯カメラがあるので、網を持って室内を走り回るなどと云った不審者ムーブは出来ません。「船内で乗客が何か持って暴れている!」とか騒ぎになったら一大事ですからね。
天井の低い所に ピト っと留まったところで、ゆっくり真下から網を近づけ、
採った!
コイツめ~さんざん手こずらせやがってぇ
そのまま網を持って船外に。
えっ? そのハエをどうするのって?
どうもしないさ…
ただ、海は広いだろって教えてあげるだけさ…
| 2つの海を戻って… |
江差港に着く頃には夕暮れが船内を照らしていました。一昨日には見ることが出来なかった、日本海に沈む夕日です。
下船時刻となり、重い荷物を持って客室を出ます。見送るスタッフにお礼をしてタラップを降り、一日ぶりの本土へ無事降り立ちました。
ありがとうオクシリアイランドフェリーの皆さん。ありがとうカランセ奥尻、まさか船内で昆虫採集することになるとは思わなかったよ。
待機していた送迎バスの乗車をやんわり断って、歩いて車まで戻ります。夕暮れの港を少し歩くってのも乙でしょ 多分。
車に辿り着き荷物をバラして、車内に残していた服にもう一度着替えたら少し気分が落ち着きました。
時刻は17時25分過ぎ。マジックアワーと云うことで、帰路に就く前にちょっとだけ寄り道していきます。
鴎島は陸繋島なので歩いて渡ることも出来るのですが、手前の開陽丸記念館でパシャパシャ写真を撮って終了です。近隣の施設・土産屋もついさっき(17時00分)営業終了しちゃってるので、長居は無用です。
さてここからはひたすら帰るだけ、函館を目指します。
海岸沿いを北上していきます。

夕闇の中、小さく見える奥尻島。さっきまであそこにいたんだよな…
島に重なって見える小さな光る点は、さっき港を出たばかりの最終便のフェリー。「俺も乗せていってくれよ…」と胸一杯でした。
江差を出る直前、残金に余裕があったので飲み物欲しさにスーパーで買い物。観光地とは違った安いお土産も買っていきました。
国道227号線を東進し、厚沢部、北斗を駆け抜けていきます。道中はやはり地元の車にグイグイ抜かされますね、自分は先を急がず、奥尻の余韻に浸る為島津亜矢を流しながらゆったりドライブです。
だんだんと夜景が明るくなってきて、函館が近づいてきました。
この後はそのままフェリーへ…といきたいところですが、まだまだ時間が空いています。当初の予定として、フェリーに乗る直前のこのタイミングで北海道土産を買い揃えるつもりだったので、乗る便を繰り下げて22時05分の予約で取っていたんですよね(遠征前のスケジュール表参照)。
残金もあまり残ってない、この状態で人の多い都市部の商業地にも行きたくない、かといってフェリーターミナルで待ってるだけじゃ勿体ない…というワケで、この日最初の食事にあり付くことにしました。今日一日ずっと水モノばっかり口にしてましたからねぇ。
七重浜の通りを行ったり来たりして店を探しますが、20時を過ぎると大体どこも閉まっちゃってます。何度も書いていますが、この格好・状態でラッキーピエロみたいな所に入るのは憚られます。
こういう時はやっぱり、牛丼屋が一番気が楽ですね♪ ご当地っぽさなんぞ微塵もございませんが、これも前に書いたようにウチはグルメブログじゃありません!
が、入ってみたこの吉野家 228号線北斗七重浜店、実はこの時期北海道限定でジンギスカン定食なるメニューがラインナップされていました。これは美味しそうですね。
まぁ自分は唐揚げ丼を注文したんですけども。
吉野家を出て軽く食休みしたあと、函館入りして津軽海峡フェリーの函館ターミナルに入場しました。
こちらの入場ルートは青森とは違ってシンプルで、スマートチェックインの後は前に進むだけで待機完了なのが助かります。
向こうに見えるのがこれから乗り込むフェリー、ブルーハピネスです。…イカみたいだな…流石は函館…
乗船時刻になって、順番に乗船。
青森から来た時よりも人数が少なかったので、スタンダードルームはガラ空きで悠々と一人部屋。北海道ローカルの番組でも見ようと思ってテレビを点けたら、北海道と全く関係ない『プロジェクトA』が目に留まって最後まで観てしまうという…。
その後はテレビを消し、例のごとく鉢巻きをアイマスク代わりにして入眠。
またも一人部屋状態でリラックス出来たのか、そのまま深い眠りに落ちていきました。
| 9月24日 結び |
| 帰省! 青森へ |
フェリーを降りたらそのまま真っすぐ市街地に出ます。この青森のフェリー乗り場、乗る時はややこしいのに出ていくときはこの上なくシンプルなルートだったな…笑
うわぁ~~、帰ってきたぜ青森市に~~
信号待ちでふと外を見る。
あ、あれ??…青森…市…?
さっきまでの北海道でのドライブと違ってなんとも退屈ですが、安心感の裏返しでもありますね。
そして、遂にこの時が―――
遠征終了、帰宅しました。
北海道で買い込んできた各種お土産、採ってきた虫、そして洗濯物笑 を車から降ろします。
この時、一番気掛かりだったのはクーラーボックス。実は、初日の夕方以降一度もフタを開けていません。何せ、保冷剤を丸3日保つのは非常に厳しいですからね。初日にお土産買っちゃいましたし。江差に車を置いていってた間、天気も良くてだいぶ車内も温まっていたでしょう。
もし全部融けていても、中に冷気が残っていれば少しでも延命出来ると思い、帰りの道中は一切触れないで来たのです。
さぁ6面真空パネル! お前の本気を見せてみろ!

やっぱり全部
保冷剤も、塩辛含めた冷凍食品も全解凍です。とは言え、蒸れた様子は無く、結露もほとんどしていません。
(後日、チョコレート類も確認し、溶けた痕跡は皆無だったことが判明しました。これはつまり、保冷剤は3日目の昼で力尽きたと云うことになります。スゴイ!)
家に帰ってきたのと荷物の整理でドッと疲労感が増しましたが、
あと一つ、寝る前にしないといけないことが残ってますね!
シャワーが気持ちイイ♪♪
| 遠征のまとめ |
▼掛かった費用
①フェリー代
津軽海峡フェリー:青森⇒函館11,000円、函館⇒青森11,000円
オクシリアイランドフェリー:江差⇒奥尻6,280円、奥尻⇒江差6,280円
②レンタカー代
24時間:13,100円
③ガソリン代
レンタカー分:975円
④他費用
五稜郭観光駐車場代:300円
絆創膏代:680円
以上、お土産代と飲食代を除くと合計で49,615円が経費として掛かりました。5万円近く掛かったのは結構高くついたなぁと云う印象ですが、天候が悪くなければ奥尻へはフェリーに車で乗って片道2万円以上掛かっていたので、これでも安くなった方なんですよね。島内を移動するだけなら、レンタカーの方が断然おトクなんですね。
…って言うか、「絆創膏代」がなんかジワる 笑
▼移動距離(車)
↑↑自家用車での距離だとこのような走行距離になります。(写真 上段)。函館-江差間を往復しただけ(&ライトトラップ)で、フェリーも使ったので距離自体は大したこともありませんね。青森市から深浦町、または青森市からむつ市まで行って帰ってくる程度と考えれば楽なものです。
なお、レンタカーの走行距離ですが、およそ80kmでした。
▼採集個体
そして、今回の採集成果です。
ヒメオオクワガタ♀ 31mm
ヒメオオクワガタ♂ 46mm
アングルが定まってないですよねぇ。仕方ないんです、元気良すぎて止まってくれなかったんですよ、特に♂が。こうやって落ち着きのない動きを見て何となく分かりましたけど、こいつらかなり新しい個体です。しかもその証拠に、このペアなんとド完品! どこも一切欠けてない上、身体に少しの傷も付いていません。これはもしかしたら、単に新しい個体だったと云う理由の他に、採った場所が他の個体と闘争が起こるほどの密度で生息していなかったと云う風にも考えることが出来ます。実際、齧り痕も少なかったしね。
他のアングルでもこれが精一杯ですが、どうでしょうか、他の地域と比べて形態に差は見られますか? 個人的には、後脚脛節の棘がかなりはっきりしている点が興味深いと思ったんですけど…まぁいずれにしても♂♀1頭ずつですもんねぇ…
ちなみにNo.7から聞いた話ですけど、北海道産のヒメオオってのは本州以南の産地ほどの特大サイズの♂個体は見られないんですってね。だからといってこれらの個体が大きいってこともないんですが、見栄えとしては悪くないですよ。
それとついでに、おまけでコイツらも↓↓
「余裕が無い!」とか言っておきながら、地味にこんなものを摘まんでおりました。
全部3日目に道中採ったものですが、普通種でも貴重な思い出です。
| 偶然の新事実…? |
なんと昨日、奥尻の親戚から青森の祖母に自分のことで電話がきたと云うのです。
その話を聞いた瞬間、頭の中には疑問符しか浮かびませんでした。
「あれ? 奥尻に行ってることは誰も向こうに伝えてないよね?」
青森にいる祖母と奥尻の親戚のお婆さんは、現在では滅多に連絡を取り合うことは無く、今回の渡航も青森側からは誰も教えていません。
詳しく話を聞いてみると、その内容にビックリしました。
実は、最終日に山を歩いている最中に出会った、“山仕事をしていたあの人” が親戚に知らせてくれていたと云うのです。
なぜそんな展開になったのかと云うと、少しキッカケがあります。
山道を戻ることになって、車両に乗せてもらったと書きましたよね。その際『軽い身の上話』をする中で、
・自分が青森から来たこと
・会ったことは無いが、青苗地区に親戚がいること
などを話したのです。「青苗に親戚が…」の部分が気になったのか少し掘り下げられまして、お婆さん(祖母の妹)であることや名前の苗字が〇〇であること、その他うろ覚えだった情報を多少オブラートに包んで話したのです。
その後、その方は仕事終わりにこの親戚のお婆さんを訪ねてその話を伝え、「あれッ!? もしかしてその子って青森の姉さんの孫とかじゃないの?」と勘付いて連絡をしてきたと云うのです。電話があったのが夕方で、「もし泊まる場所決めてないんだったらこっちで面倒見るから、その子の電話番号教えて」と助け舟を出そうとしてくれてたらしく、フェリーに乗ったことを把握済みの家人がそのことを伝え、このやり取りは収束したらしいです。
ちなみにこの時、「せっかく来るんだったらウチに寄ってけばよかったじゃない!」とか言って、話がちょっと紛糾したらしい 笑
では、なぜ親戚のお婆さんがそんなすぐに見つかったのか。
離島の一地区とは言っても、青苗地区は十軒二十軒程度の規模ではありません。端の家から順番に訪ねて見つけたワケでもないし、〇〇と云う苗字だって島内では珍しくありません。
なんと実は、山仕事をされていたこの方「青苗のお婆さんの娘の旦那のお兄さん」、つまり親戚の方だったのです。
自分が話した断片的な内容からまさかと勘繰り、家に寄って事情を話したと云うワケです。
これを聞いて、感想が「すげぇ」しか出てこなくなりました。
| 今回をふりかえって |
理想的な採集成果(「名刺代わりに配れるほど採ってくる」って言ったアレ)は得られませんでしたが、そんなこととは関係なしに大満足で終われました。遠征に行くとなったら当然個人的にはその後採集記を仕上げることを前提としていますが、正直ここまで長くなったのは予想外でした。他人の目から見れば結果がギリギリなのは否めませんし、書くのは採集部分だけでいいだろと思うかもしれません。それもそうですが、探しても意外と見つからない土地の採集記って、頑張って書きたくなるんですよね。南西諸島や伊豆の島々なんかは読もうと思えばたくさん見つかりますけど、北の方って佐渡あたりも含めてあまり無いですよね。今回の奥尻採集記は「無いから知りたい、そして書きたい」と思う人が今後も現れ続けてほしいなと云う裏メッセージも実は内包していたりするんですよ(ホントに。後付けじゃないですって)。
最初、単なるネタ振りとかじゃなく本当に近畿の某所に行こうと画策していました。それを止めて奥尻に変更したことは、今でも「よくぞそこに決めたな当時の自分!」と思っています。奥尻を選んだことで「虫だけでない、人による充足感や驚き」を得られたのは望外です。知らない土地を訪れるにしても、その都度新鮮な体験・新しい気付きが得られるとは限りません。でも、得るものが多かれ少なかれ、そこを選んだことに自分が満足できてるんですからいいですよね。クワガタ採集記として読めばここまで無駄話が過ぎる記事は他で見ない気がしますが、自己の体験を精彩に遺しておこうとした結果ですからね。
ここまで仕上げるのに3週間掛かったのは辛いところですが、それだけに、自分自身もこの記事が出来上がるのを楽しみにしていました。2025年最大の記事として、自分の他にも楽しんでくれる人がいれば幸甚です。
これにて3部にわたる北海道遠征採集は完結です。
ご精読ありがとうございました!


この記事へのコメント
ヨシミツ
最期の採集結果にも驚きましたが、まさか山仕事のおじさんが笑
凄く面白かったし、人生ってかくあるべしと強く影響を受けました
会長
色々とお待たせしておりました!
艱難辛苦の末にやり遂げられました。今年は特にクワガタ採集で満足したことが無かったので、物量的にはアレですがそうした意味ではなんとも晴れやかな気分で終わることが出来ました。
採れたら一回限りで十分だろうとも思っていましたが、これはちょっと考え改めたくなる旅でしたね。さぁ、ヨシミツさんも是非! 笑