このネブトクワガタ界隈で、俗に
「ネブトガチャ」などと云う言葉があるのをご存知でしょうか。
詰まる話、ギャンブル要素があると云う事なのですが、
おおかた2つほどの意味があります。
①野外採集の生体♀の中で、卵を持っている個体が入手できるのかという問題(種によって、野外で先に産卵を終えた個体が多く採集されるので、入手した野外個体が全く産まずに死ぬ事も多い)②生体・標本双方において、多数出回っている普通種の中に珍種が混じっている場合がある去る
2021年、ハルマヘラ島から
プラティオドンネブトがいくつか入荷しました。
2ペア入手したのですが、その内1♀が
どう見てもプラティオドンではなく、大図鑑で確認すると
セラートゥスネブトかもしれない事が判明。(同産地において特徴的な外見の♀個体は本種以外には図鑑で見られませんでした)調べてみても、今現在のところ生体も標本も出回っていないようで、ガチャとして考えれば「とんでもない大当たり」を引いてしまった事になります。
自分としてはただプラティオドン買っただけで、「他の種が紛れているかも・・・」なんてのは全く考えてなかったんですけど・・・
興奮しながらもセットしてみたのですが、
卵はまだ持っているのか?そもそも産卵の難易度は高いのか低いのか?情報も無いし運要素もまだまだ残っていたのですが、セットした9月から3ヶ月以上経った
去年12月の時点で、既にほぼ諦めているような状態でした。
この件が進展したのは今年の
2月末。
セットを組んだボトルの内部も相当腐敗が進んでドロドロになってきました。
いつまでも現実
(失敗)から目を背けてはいけないと意を決し、久しぶりにボトルを手に取って持ち上げてみると側面に
なんと幼虫の姿を発見!!!諦めていた中でこれは嬉しいですね。

マットの表面は腐敗し、キノコまで生えてました。
壁際を見ると、♀が潜って動き回った形跡が色濃く残っていますね。

マット上部を軽く掘り上げると、ツヤツヤの幼虫が出てきました。
その後マットの仕込み作業などもあって、数日に作業を分けて複数頭の幼虫を確保しました。

割り出しが遅いだけあって、幼虫はどれも丸々太った2令~3令ばかりです。
こんな小さな♀成虫の産んだ卵から、こんな大きな幼虫が育つのは本当に面白いですね。
流石に野外品からの産卵という事で、あまり多くの幼虫を得ることは出来ませんでした。
ほとんどの個体はプリンカップでの飼育ですが、
その後
5月に入るといくつかのカップでマットの偏り・凝縮が見られ、蛹室が作られている事が確認できるようになりました。ネブトなので外側からはほとんど見えませんが、大きさから見るとやはり♀でしょう。
一部、蛹室内部が覗けた個体の様子を観察しながら一部の♀のカップを暴いてみたのは
6月の事。

我が家でも見慣れていたプラティオドンとは違ってツヤっツヤの体表は新鮮です。
こんな具合に、無事♀新成虫を見られた事に小さな興奮を覚えつつ、
♂だと見られる幼虫のカップを見てみるとこちらはまだまだ幼虫・・・

国産ネブトも見た事が無いので見慣れませんが、最大30mmちょっとの種だと思ってこの幼虫を見ると、随分と大きくなるんだなと驚きを覚えます。
♀に遅れること1ヶ月、
♀だと勘違いして小さなカップに入れていた♂が羽化していたのを確認。

不全していなさそうでまずは安心ですが、♂はまだ図鑑でしか見た事が無いので頭部を確認するこの瞬間は緊張しますね。
紛うことなくセラートゥスネブト! 確定です。大きめのカップやビンに入れた幼虫は、これよりさらに羽化が遅れているので、ここからまた待つ事にしました。
♂♀共におおかた羽化したので写真を撮って確認してみます。

♀個体。
16~18mm程度で、プラティオドンよりは一回り以上小さいです。
頭部から上翅まで、光沢が強めで点刻は浅いです。親♀はだいぶスレていたので、見た目にも新鮮に感じます。
なお、今回はちょっと面倒くさかったですが成虫画像にはコピーライト(みたいなモノ)を入れました。
ウッディをはじめとした幼虫詐欺は依然として多く、最近はヤフオクの絶滅危惧種の出品停止を目前にしてオオクワなどの詐欺も多数見られます。自分も過去にヤフオクで画像を盗用された事もあり、「自分の画像なんかどうせ使われないだろう」なんて楽観視すると後でこちらが思わぬ被害を受ける可能性もあります。
今回は、国内流通も無い種という事で、人目を誘う種かどうかは別問題として念の為加工してみました。

同じ環境で飼育したのですが、真っ黒な個体、やや赤みを帯びる個体など色味に違いが出ています。
これが、累代を重ねていくと固定化できてしまうのでしょうか。
そして♂個体。

最初に羽化を確認した個体ですが、体長は
25mmちょっと程度。

大腮は、他のネブトではまず見られない歯型で個性的です。
そして、この画像だと判りにくいですが頭胸部がほぼ無点刻で鈍く光沢があるのも国産や大陸系のとは違って目新しさを感じます。

別角度から見ると、大腮の外縁に2つのエッジが通っています。
今度は、初期の羽化♂個体を2頭並べてみました。

サイズはどちらもほぼ同じくらいですが、大腮の形に個体差が見られます。

1頭目とは別個体ですが、大腮中間
(鋸歯がある部分)の肉付きが痩せて見えます。
♀の色味の件もそうですが、こうした特徴のバラつきもWF1ならではの面白みでしょうか。
カップ組は大体同じくらいのサイズでしたが、
最後に1頭ビン飼育していたものも固まったので撮ってみました。


右個体、サイズは
30mmを超えていてカップ組とは迫力が違います。
大腮も太く、頭楯の形も相まって鬼の口のようにも見えます。大腮表面の捻じれも顕著で、造形の複雑さがより増して見えます。

手に留まらせるとこんなに小さく見えてしまうネブトも、拡大して見るとなんとも味わい深い造形をしているものですね。今回、WF1個体を見て深く感じさせられました。