ヒメオオの信徒への手紙

今年も、ヒメオオクワガタ採集の季節がやってきました。

9月上旬の時点ではまだ一度もヒメオオ採集に行っておらず、知り合いの土産話を聞いては悶々としていました。
今期最初のヒメオオ採集に行けたのは、先週8日





この日の目的地は、自身まだヒメオオを採っていない某市町村
ヒメオオ採集は長年やってきたので、低地の市町村を除いてはかなりのラベルを採っている自負はあるのですが、未採集の市町村があと少し残っている状態です。それらの市町村も過去に何度かアプローチしたもののあと一歩? のところで毎度空振りしていて、少なくともどの市町村も「行きさえすれば採れる」ような甘っちょろいものではありません。

ただ、元々の採集難度が高いのかと言うとそうでもありません。未採集市町村は各地、ブナ原生林もそれなりに残っていますし、「ライト焚いてて飛んで来た事あったよ」「昔採れてたけど今は道がちょっと荒廃しちゃって採れなくなったな」と云った話も採集仲間から聞きます。古いですが文献にも記録が残ってるものもありますからね。今回行く某市町村も例に漏れず、記録もあるし採ってる人もいます。タイミングと運、結局のところ「自分にツキが無い」だけなのでしょう。

さて、当地へのヒメオオ採集は最後に行ったのはもう何年前になるか・・・と言うくらい久しぶりです。この市町村は長い林道が何本も延びては周回して別の林道に繋がるような構造になっているところが多く、前回はそういった林道に入った事で目移りしてしまい、植林地帯をウロウロするだけで面白みも無く凡退した記憶しかありません。
それからしばらくここは避けていたのですが、久し振りにこの市町村の地図に目を通していたところ別のルートで面白そうな場所が在ることを発見しました。今回は、そこを目的地としました。


現地への道中が少々長い事を見据え、朝から現地入りできるように目覚まし時計を朝6時00分にセットたのですが・・・





起床。時計の表示は10時30分
寝過ごしたァァァ―――!!!!!

身支度を整え、車に積んであったライト機材も急いで降ろし、出発したのは11時を過ぎてからでした。
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この展開、本当に何十回目なんだろう・・・


太陽もほぼ真上まで昇っていて、日曜日と云う事もあってどこもかしこも車だらけ。道中は山道すら車が詰まっています。
ひぇ~~ん・・・前の車がトロいよぉ~~





信号に引っかかる事も無く、林道入口に到着したのは昼過ぎ13時頃。空は快晴、風もほぼなし。

Google mapの航空地図で見る限り、上空からの角度の所為か道が活きているかどうか判然としていませんでしたが、ちゃんと使われている道だったようで安心しました。オフラインでも地図が確認できるよう、電波の入るうちにスマホに地図を読み込ませておきます。

さて、この日の行程ですが、地図を見た中で特に可能性のありそうな林道1本に絞って探索する事に決めていました。これを【林道A】とします。
その上で、もし時間が余ったり進むのがあまりに困難だった時の事を想定し、林道Aの途中から分岐している別の林道を2次プランとしました。これは【林道B】とします。


【林道A】
未舗装路になり標高も既に400mを越えています。林の奥にはブナも見え隠れし、既に生息圏には突入している模様。

途中、林道Bとの分岐を過ぎ、林道探索もここから本番。
徐行しながら “おいしそうな樹” を物色していきます。


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徐々に沢に近付いてきたと思ったら、なんと “直接” 沢を渡る事に・・・

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この数日雨が降っていなかったので問題なく渡る事が出来ました。
(地図で見た時はてっきり橋を渡るもんだとばかり思ってた・・・)


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今度はヌタ場。一応オフロード対応のタイヤを履いて車高も上げているので難なくクリアしましたが、見た目にはちょっとこわい路面でした。

その他、浅めのクラックに気を付けたり、落ち枝を踏み弾いてしまったりと地味に注意が要るドライブが続きます。さすが山奥と云った感じで、採集の期待は高まります。

しかし、林道脇の樹にはヒメオオは勿論、齧り痕すら見つける事が出来ません。さらに、思っていたより林道の距離が短く、あれよあれよと言う間に峠に達してしまい隣の市町村に到達してしまいました。山の峠付近って、ヒメオオがボツボツと付いている事もあるのですが、ドンピシャな雰囲気のヤナギ並木にもヒメオオの生体反応は一切ありません!

その場で迷いましたが「もう来る事も無いだろうから・・・」と、別市町村に入った後もこのまま林道を進む事にします。意外にも人通りはあるようで、他の車のタイヤ痕もあるし、1台のバイクともすれ違いました。おそらくこのまま林道は反対側に貫通できるものと思われましたが、
・進むにつれて原生林環境が薄れ植林地帯になってきた事
・残された時間を林道B探索に充てる為
折り返して道を戻る事にしました。

帰り道も様々な樹の枝を見ていきます。ヤナギ類、ダケカンバ、ウダイカンバ、ナナカマド、ヤマハンノキ・・・しかし齧り痕はやはり付いていません。
本命だった林道が手応えなしに終わってしまい溜め息が多くなってきますが、気持ちを切り替えて次に向かいます。


【林道B】
林道Aの道を戻り林道B分岐まで戻ってきたのは15時前。陽も落ちてきて探索時間はあまり残されていません。


林道Bに入って2kmちょっと。
ここまでの時点で林の雰囲気もまだヒメオオ採集には向かない様相(いない事は無いんだろうけど)でしたが、
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残念ながらここで車止め。観測施設が在る関係で、ここまでの道が整備されていた模様です。

・・・と云う事で、いよいよここからがヒメオオ探索本番。
むしろ今までに採るのが叶わなかった産地ですから、今さら車を降りずに採ろうなんて虫がいいにも程がありますね。トレッキングシューズに履き替え、薮漕ぎ用の上着を羽織り、リュックサックと網を携えて、深く笹薮が茂る林道にそろそろと入りました。

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はじめてのコルリクワガタ採集

何度も何度も言っていますが、青森県という土地はクワガタの多様性に富んでなくて、クワガタ分布数は47都道府県で下から3番目。青森県内限定で採集していると一生見る事ができないものは、そりゃもう色々いるワケです。

一念発起、遂に重い腰を上げて “脱・青森” に踏み切って念願のヒラタクワガタを採集したのは5ヶ月前の事でした。

季節変わってこの時期、もう一つの憧れのクワガタがシーズンを迎えています。

それは、コルリクワガタ
青空の下、残雪の春山でブナの新芽を飛び交う様子をいつか自分の目で見てみたいと長年想い続けてきました。青森にはルリクワガタがいますが、こちらは新芽での観察は夢のまた夢で、野外活動個体は材表面を歩行しているかビーティングするかでごく稀に見つかるレベル。
本州以南に広く分布していると云うのに北限が岩手県と秋田県と云う歯痒さが、一段と憧憬を増幅させられる一因でもあります。

そんな中、5月半ばの連休が好天に恵まれ、前回の和歌山採集で多少なりとも遠征慣れした事もあってコルリにも挑戦してみようと、再び青森を脱する決意を固めました。





 5月11日

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深夜1時、自宅を出発しました。

今回の採集は、隣県と云う事もあって日帰りを想定。陽が昇ってすぐ山中に踏み込めるように、早朝の内に現地に着こうと云う算段です。前日の仕事を定時で無事引き揚げ、帰宅後は22時まで寝溜めしておき体力を回復(でも採集道具の準備積込みは全て出発直前!)。アラームが利かずにうっかり朝まで寝過ごすようなポカを犯さなくてホントによかったと思っています。
遠征前の腹ごしらえとして、すきやに立ち寄って牛丼を腹におさめます(注:いくら青森でもちゃんと牛丼屋は24時間営業していますよ)

青森県内は夜中の車通りが極めて少ないので、ひとまず岩手入りするまでは下道を使い高速料金を節約します。
南部方面経由で二戸市から岩手県入りした後、滝沢インターチェンジから東北道に合流し、一気に南下。

盛岡市に入った辺りで連絡が入りました。

某氏 「起きてますか?」

フフフ、ちゃーんと起きて盛岡まで来てますとも!
東の空はもう白み始めていました。





周囲も明るくなってきました。高速道路を降りて目的地へ迫ります。

間もなく辿り着いたその場所は―――


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岩手県 西和賀町
県西部、秋田県と接する奥羽山脈脊梁部に位置していて、岩手県屈指の豪雪地帯の一つです。


車を停めて、長かったドライブの疲れを抜きつつ道具の準備をはじめます。
スマホにこれから向かう場所の地図を読み込ませていると、1台の車が横に停まりました。


No.7 「お疲れぃ~っす」


実は今回の採集、自分一人の “行き当たりばったり” 採集ではなく、コルリの新芽採集の経験があるNo.7との2人組採集。先ほどの連絡も、「会長が夜寝入って採集予定が白紙になるのでは?」と心配してのものだったのです。

今いるこの西和賀町は、コルリクワガタの産地として注目すべきニュースが近年報じられたばかり。No.7は前年に同エリアで本種を採集した事で、生息環境や発生時期について見識を備えています。その知見を基に、今回の採集に向けて何度か打ち合わせをしていました。
その中で、「既知の産地で採ったって無意味!」と云う両者の意見の下、採集記録の無い全く別の山塊で本種を探そうと云う事になったのです。
そうです、新規開拓をしようって言うんです!
なお、ポイントの選定・行程計画は全て自分である!
(これは・・・ “行き当たりばったり” ではないのか!!?)


装備を整え、車を置いて徒歩で山に入ります。
新芽採集を想定しているので、採集道具は基本的に網(自分:短尺、7:長尺)としますが、もし新芽採集の時期がズレていた場合に備えて斧・鉈もリュックにしまっています。山奥に分け入る手前、双方とも熊スプレーを携帯。惜しむらくは、飲料水は持ったものの、行動食レーションを持っていない事。高速道路を降りて以降唯一のコンビニをスルーして目的地に到着してしまったせいで、食料を買いそびれていたのです・・・
服装は双方ともつなぎ・トレッキングシューズ着用ですが、自分は加えて前から試してみたかった実験として「ゼブラ柄のパーカー」を羽織ってみました。以前どこかで、『シマウマのあの模様はハエなどの邪魔な虫を寄せ付けない効果が有る』と云う説を読んだ事があり、双翅目のしつこいこの時期にこれを着る事で変化があるか見てみたかったのです。余談だけどこのパーカー、レディースだぞ。
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そしておまけに、未だ勿体ぶって部屋に飾りっぱなしだったこの「松阪牛霜降りタオル」を遂に解禁! 結果的にライオンにメチャメチャ狙われそうなビジュアルになってしまいました。ここがアフリカのサバンナでない事がせめてもの救いです。
(タオルについては【はじめてのヒラタクワガタ採集 ‐前編‐】を参照)

山に入った我々の目の前に、2つの分かれ道がいきなり現れました。

① 正面の、鬱蒼とした薮に埋もれたルート(登山道の表記通り)
② 側方の、鉄柵が付いた法面上を伝うルート(地図表記無し)

No.7は「の方も先ちょっと見てみません?」と言うものの、「いや、そっちはどうせ法面施工管理用の通路になってるだけですぐ行き止まるだろうから時間の無駄、に入りましょう」と身の丈ほどの草が生い茂るへ意気揚々と飛び込みました。
時刻は7時40分を回ったところです。

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一面の緑、その下に隠れたゴロ石、枝分かれして広がる灌木。登山道に入ったばかりにもかかわらずこの荒れようは、前途多難である事を確約していると言っていいほどでした。しかも、コルリの生息が期待される標高に上がるためには尾根筋にまず合流しなければならないのですが、その尾根筋に辿り着くまでも時間が掛かっています。ずっと水平に進んでいます。
足元は非常に躓きやすく、薮を掻き分けて進むにも難儀します。地図アプリを開いて位置を逐一確認しますが、かなり時間が掛かっています。この時点でもう先行きが不安です。

やっと尾根筋に辿り着いたと思えば、今度は急斜面
地図を読んでいた時から覚悟していたとはいえ、それでも戦意を殺ぐのに十分な光景でした。
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何しろ、地図には書いてあるはずの登山道が全くと言っていいほど残っていないのです。
傾斜40°はあろうという急登で、笹や灌木を掴まないと登れない区間もあります。地図の高等線もギュウギュウで密です。縦列で登っていきますが、枝が弾けたり石が落ちる危険があるので双方十分に距離をとって進みます。


斜面を登り始めてまだ数分しか経っていないところで、やらかしました。
先頭を進んでいたのですが、若木の枝と間違えて枯れ枝を掴んでしまい、手繰った拍子に折れて後ろに体が投げ出され、約2m背後の立木に激突しました。
左半身を強打し、20秒くらい呼吸が出来なくなりました。痛打したのは肋骨(11番前後?)・左腸骨・左膝で、特に腸骨をモロに打ってしまいましたが、真っ先に心配したのは腰のポケットの中身。スマホは幸いにも右ポケットに入れていたのでちょっと安心しました。そして何よりそのすぐ下にはNo.7がいたので、巻き込まなかった事は本当にラッキーでした(かえって立木にぶつかってよかった)

身体の痛みで足取りも重いので、ここからは交互に先頭を入れ替わり登っていきます。

人の通った痕跡なんてほとんど残ってない上に、傾斜はますますキツくなってきます。休憩できる足場も減り、ひと息で10m以上を登らないといけない区間も増えてきました。このまま一気に標高を100mほど上がらなければ傾斜が緩くなりません。進むも地獄、戻るも地獄です。

そんな地獄の急斜面のど真ん中で、今度は別のハプニングが発生しました。


No.7 「ッア゛!! やっちまッたッ!!!」

何事かと振り返ると、No.7が顔を押さえてうつむいていました。薮漕ぎしている間に、リュック脇に差した熊スプレーのストッパーが外れてしまい誤噴射飛沫が左目に入ってしまったのです。
携帯していたお茶を使って洗い流しますが、涙管を通ったスプレー成分によって鼻まで痛みだしたとのこと。
時間をかけゆっくりとお茶で目を洗う事を繰り返し、痛みが和らぐのを待って再出発します。彼の左目は、真っ赤に充血していました。


玉のような汗を垂らしながら急登を登り続けます。
地図を見るとほんのわずかな距離に見えるのですが、標高差が激しくて「かなり歩いた」と思っても(ほとんど進んでない)スマホを見る度に絶望的な気分になります。

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相変わらず道は無いに等しいのですが、地面から見え隠れする「何かのケーブル」を道標にひたすら上を目指します。

やっとの事で急登区間を登り切り、標高は550mに至りました。
まだまだコルリの生息標高でない事は分かっていますが、この時点でちょっとキナ臭くなってきました。
何しろ、この時点で時刻はもはや10時を回っています。実は、今回目的としているエリアはこのまま単純に標高を上げていくのではなく、小さなピークを2~3ヶ所経て標高800m以上の場所に向かう行程が必要なのです。標高800mどころか1つめのピークにすらまだ遠く及びません。地図上で距離を測ると目標の標高800mラインまで3分の1未満の距離しか進んでいないので、実質到達不可能と悟りました。

こうなると考えることは一つ、「標高低くてもいたりしないかな~・・・」“一縷の望み” と云うよりはほぼ完全に “妄想” です。
たけのこ(ネマガリタケ)はもう伸びきっているし、周囲の木々は完全に葉っぱが開いています。図鑑や他のブログで見る新芽採集の画のような残雪は、一切ありません。林床にはアリやクモが闊歩し、そこかしこの葉上にはタマムシ類、コメツキ類、アカハネムシ類で賑わっています。景色は完全に夏山です。

傾斜が緩くなったのはいいのですが、いよいよ進むのが大変になってきました。
低標高の尾根筋だと日当たりが良いために灌木と薮が絡み合うような密度で、もはや人が立ち入る隙がありません。薮に身体を預けながら潜り込んでいくような体勢です。上空ではクマバチが乱舞し、足元にはクマの糞が所々に落ちています。

倒木などの枯れ木も見ていますが、産卵痕は普通のルリさえ付いていません。

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標高600mに達したところで時刻は11時半過ぎ、南中時刻に達してしまいました。

依然として夏山の様相は変わらず、薮漕ぎ登山の状態もまるで改善の兆しがありません。
失意の我々をあざ笑うかのように、無数のハエとブユがうるさく付きまといます(五月の蠅は・・・)。数として3桁は群がっていて、ハエはいいにしろブユは辛い! 髪の中に潜り込んできて噛んでくるので落ち着きません。ちょっと立ち止まってしまうと瞬く間に取り囲まれてしまうので水分補給もゆっくりしていられません。ゼブラ柄パーカー全く役に立たねェ! 重ねて言うけど、やっぱりここアフリカのサバンナじゃないもんね・・・






木立の合間から遠くの山が見えるようになったところで、決断の時を迎えました。

自分 「・・・帰りますか~・・・」

No.7 「・・・帰りましょう・・・」

まだしばらく先にある第1ピーク、その山頂に見えたのは【しっかりと芽吹き繁茂する木々】の様子。これが “トドメ” でした・・・


しかし、ここから踵を返そうにも、それすら躊躇われます。
道が無い登山道を進んできたので(日本語おかしい)、さっきまで通った場所すら判りません。行く手を遮る木の枝の向きもあって “一方通行” みたいな場所も多かった手前、同じ場所を通れません。

通れそうな場所を見つけて進みますが、地図アプリで現在地を確認すると登山道から少しズレてきている事に気付きました。
慌てて軌道修正しようとするも、思うように戻れずむしろますます離れていきます。

No.7 「水平移動より、むしろ登るくらいの方がいいかも」

そう言って先頭を交代したNo.7が見えなくなりかけたところで、

No.7 「会長ー? さっきの道、発見しましたよー」

登りの時、急登を過ぎたあと一時的に登山道 “のような場所” に入った(ただしその後すぐ自然回帰で消滅)のですが、どうやらそこに運よく合流できたようでした。
これを逃す手はないだろうと、この道を辿って行けるところまで下っていく事にしました。

ところが、しばらく歩き続けるうちにじわじわと違和感を覚えるようになってきました。
道が “終わらない” のです。
それどころか、気のせいか段々と “道がしっかりしてきた” ような感じすらあります。気が付いて現在地を確かめると、なんと地図の登山道から大きく逸れていました。当然、今自分たちが歩いているルートは地図には載っていません。国土地理院の地図なのに・・・
不安は拭えませんが下っているのは確実なので、命運を天に任せ道沿いに歩くしかありません。

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道があるとは言え、尾根から外れただけあってさっきより急斜面です。
まだ慣れない新品のトレッキングシューズを履いてきたせいで、靴擦れが起きて爪先に激痛が走るようになってきました。目の充血が治まってきたNo.7を先に行かせ、自分は休み休みゆっくり下るようになりました。


そうして休憩を繰り返す中、とある樹に付いたつるの葉上に石粒のような虫が付いているのが目に留まりました。最初は爪先の痛みと疲労感でボーっと見ていただけでしたが、4~5秒後には驚きに変わりました。

自分 ・・・・・・!? マダラ!!!!

大声に驚いたNo.7も慌てて戻ってきました。

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野外活動中のマダラクワガタを発見したのは初めてなので、興奮まじりで撮影に興じます。単なる偶然ですが、「よくこんな小さいのに気付けたなァ」と不思議でしょうがない心境です。
ただの山登りと化していた今日の採集で、自身唯一の採集品になりました。

No.7も感化されたのか、
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その後目に留まったリンゴカミキリを土産にしていました。
マダラクワガタといい当地の様子といい、低標高地とは言え季節の進む早さを痛感しかえって諦めが付きました。


さて、その後ですが
どこへ行くのか分からなかったこの登山道が徐々にスタート地点に近付いている事が判りました。

足先の痛みを堪えながら歩き続けて間もなく、
先を進んでいたNo.7が立ち止まってこちらを待っているのが見えます。まさか・・・!

No.7 「見てくださいよ ⇒」

指差す先には人工物が色々と見えます。
ここで全てを理解し、2人揃ってその先へ向かいました。


そして、あっという間に到着した場所は・・・
スタート地点だったのです。

そう、山登り開始地点で現れた2つの分かれ道
どうせ法面管理用の通路で行き止まりだろうと思い無視したの方、まさにそこへ戻ってきたのです!
しかも、時刻はまだ12時50分。たった1時間で戻って来られたのですから、2人揃って脱力。苦笑いですよ。





あまりに早く戻れてしまったため「別のポイントに行ってみるか?」と云う案も出ましたが、お互い身体にダメージが残っていた事もあり早々に却下。近くの自販機と売店に立ち寄ってドリンクとソフトクリームを口にし、疲れた体を労います。結局何一つとして成し遂げてないんですがね・・・。

「30歳過ぎると体の治りが遅くなって――」などとオジサン的会話やら、西和賀の土産選びや今年の夏の予定など話してワーワーキャーキャーした後、早めに休養を取ろうと云う事で14時前に解散しました。

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はじめてのヒラタクワガタ採集 ‐後編‐

前記事、【はじめてのヒラタクワガタ採集 ‐前編‐】の続きです。

 【前記事】
   ⇒ 2024-1-27  はじめてのヒラタクワガタ採集 ‐前編‐

当初は一つの記事にまとめる予定でしたが、長くなってしまったので途中でぶった切りました。前後編成にするなら、いっそ【日昆会長 西へ】とかにした方がよかったかな・・・?(そのタイトルだと舞台が神戸になるけど)



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はじめてのヒラタクワガタ採集 ‐前編‐

ここ青森県は、今でもなお知られていない昆虫が数多く潜んでいます。
知られている昆虫であっても、記録が僅かしかないものや、特定の地域だけでしか見つかっていないものもたくさんあって、現在もまだ昆虫相の解明は未熟なままです。クワガタも例外ではなく、青森県で分布が確認されている種の一部にはまだ発見されていない地域もあります。

その一方、青森県で分布が確認されているクワガタ僅か12種にとどまり、この数は全国47都道府県中で下から3番目という少なさです。「多様性」という点では乏しいと言わざるを得ません。特に、一般書籍や児童向け図鑑でも馴染み深い “あの大型種” が分布しておらず、青森県に地域を絞って採集をしている自分にとってそれはいつか自分で採集してみたい憧れの種でありました。
しかし、常に青森県内に限定して採集してきた所為か、それはある種「誇り」にも似た感覚となり、いつからか青森県外へ出て採集する事は「青森を裏切る行為」とも思うようになっていました。

そして・・・

2024年、遂に私…
青森を裏切りました。





この採集を思い立ったのは去る2023年末
今年分の報文も投稿し終え、ブログの投稿も一段落したタイミングでした。

暫らく採集に行っていなかったこの時期、山の空気を吸いたい欲求に駆られるようになってきました。
しかし冬の採集と云っても、青森の虫(クワガタ)は今ちょっと行く気にはなれません。モチベーションが下がったのではないですが、未展足の個体を家に残した状態でさらに数を増やす気にはなれないのです(=標本屋ではないので、物ぐさな自分が近々にマウントしきれる以上の数は採りたくない)。標本でなく飼育用個体の採集と考えても、現状で青森の虫は十二分にいます。
そうなってくると、“青森にいてはどうにも採れないクワガタ” に気持ちが動いてしまいます。青森に分布してない種は数多いですが、その中でも昔から昆虫図鑑のレギュラーとして登場し本土一般に分布している大型種の一つ・ヒラタクワガタは、何かの機会にでも一度は見てみたいと憧れる存在でした。
一応、実物は見た事も飼育した事もあります。小学3年生の頃にホームセンターで、ミタニ社ラベルで売られていたミニサイズの本土ヒラタを買った事がありました。しかし、「買う・貰う」のと「自分で採る」のは全く別の価値を持ちます。

ところで、自身の採集は青森県内でのみに限定してきた、・・・と冒頭では書きましたが、実際のところは青森県外で虫を探したり採ったりする事もありました。
指折り数える程度ですが、

  • ・小学校の修学旅行で北海道で虫を探したり
  • ・外灯回りやヒメオオ採集の最中に秋田県へ越境したり
  • ・仕事で東京都に行った折に空き時間で採集場所を探したり
こんな経験がありながら「青森でしか採集した事がない」と言うのもちょっと白々しいですよね(まぁ正確には、採集行為はしたけど虫を採って持ち帰った事は無いって話なんですけど)。それに、採集してみたい虫がありながらそれを採りに行かない理由として「今まで県外で採ってこなかったから」と言うのはよく考えると意味を成していませんし、青森で採集し辛い時期に青森を休んで他県に行くのであれば、地元採集の機会を犠牲にしているワケでもないですよね。

こうして、年末のごく短い期間のあいだに県外遠征の機運が高まっていきました。
そうです。「憧れるのをやめましょう」と云うヤツです。



さて、そうとなると考えるのは行き先です。
もし採りに行くとするならどこへ行きたいか。次の3要素で考えました。

採集地の環境と想定される採集難易度
ヒラタは関東以西に分布しているとは言え、流石に分布北限にも近いエリアだと生息も局所的で県外初心者には厳しいところ。それに、せっかく採りに行くなら寒くて雪が降るエリアなんかじゃなく、温暖で個体数も多く、あわよくば大型個体も比較的見られる産地。
また、青森県での採集でも感じた事ですが、広大で潤沢な生息環境だと、特大個体が採れるポテンシャルはあっても採集適地を絞るのに時間が掛かったり、採れても個体密度が薄い傾向があります。こういう点では、むしろ地理的要因で生息環境が限定された場所の方が採集難度が低いです。

採集期間の制約
遠征とは言え、ホワイト企業や学生なんかと違い、そう易々と長期休暇は取れません。冬季の期間内で得られる連休・有給休暇が認められるタイミングがあるとすれば、土日祝日を繋げた3日間が最長です。ここから算定すると、1日だけは最低限の採集日として確保し、残りの2日間を往復で移動できる距離が限界です。

移動手段
前項とも関係する要素ですが、【飛行機&レンタカー】、【新幹線&レンタカー】、【自家用車】のどれを使って移動するかによって時間的制約も変わってきます。ただ、これについては正直言って最初から決まっていて、【自家用車】のほぼ一択で心積もりしていました。まず、まだ正確に日程を決めていない状況で、新幹線や航空機に加えレンタカー(さらに言うと船も)まで使うのは予約のタイミングや運賃の面で判断が難しいのです。加えて、恥ずかしい話ですが移動に掛かる発着時刻に縛られるのも個人的には不慣れで、「〇〇時〇〇分までに***に着いて手続きを済ませて・・・」を繰り返す手段は選びたくありませんでした。


斯くして、遠征地の候補はこの場所に絞られました。

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